Archive for 7 月, 2008

2008年7月号

火曜日, 7 月 1st, 2008

○月○日
プロ野球セ・パ交流戦が始まった。広島カープの初戦の相手はソフトバンクホークスだ。早速福岡ドームに駆けつけた。
福岡ドームに入るのは初めてである。立派なドームだなあ、といつも外から眺めていた。ドームに入ると、想像していた以上の広い空間に感心してしまった。のびのびとした、これぞスポーツ空間といえる雰囲気だ。
カープの新球場が現在建設中だけに、球場自体に私の興味がいってしまうのである。
試合前の打撃練習中のグランドに下りる。この日が誕生日といわれる王監督の姿を捜す。ひと際鋭い打球を飛ばす松中選手の打撃ゲージの後に王監督を見つけた。最近のテレビに映る痩せた王監督より、実物の監督はお元気そうに見えた。
グランドの取材陣の中で目立つのは、やはり元プロ野球選手の野球解説者の姿である。マスコミの人々とは身体の大きさがまるで違うのである。その中に呉出 身の元プロ野球選手の姿を見つけた。西村龍次さんだ。ドラフトでヤクルトに入団、活躍してパリーグに、最後の一花を咲かせたのがダイエーホークスだった。 現在は福岡を拠点に野球解説者として活躍されている。本誌にも20年位前になるだろうか、ヤクルト入団時に出身の阿賀中グランドでインタビューしたことが ある。早速その西村さんに挨拶して、後日のインタビューの約束をした。
球場に観客が入り始めると、グランドでは球団のファンサービスのイベントが行なわれている。そして、試合開始が近づくにつれて、球場内のファンの一体感を作る演出が重ねられていく。ホークスの観客動員数の多さは、こんなところにもあるのだろう。
私は友人達と外野席上にある飲食バーに行ってみた。生ビールを飲みながら観戦出来るカウンター席である。新広島球場にもこんな場所が出来ればいいなあと思ったものである。
肝心の試合はホークスペース。中盤で大差をつけられる。レフトスタンド一杯の赤いカープファンは負け戦にかかわらず懸命の応援を繰り拡げている。敵地で のファンの応援こそありがたいものはない。このへんのこと、カープ球団のお偉いさんは分かっているのだろうか。ソフトバンクホークスの球団努力を目のあた りにしているだけに、カープ球団の営業努力があまり見えてこないことが何とも歯がゆいのである。
また、こうして福岡ドームでの試合を見ていると、大リーグで活躍する元ホークスの井口、城島選手の姿が蘇ってくるようだ。球場のこのスケールに応じた選 手が育ってくるんだな、と感じさせるのである。球場、選手、観客が一体になっている。球場という器は、選手、そして観客をも育てるようである。
○月○日
こうの史代さんが来呉。前日は故郷の広島市で、自作コミックの映画「夕凪の街 桜の国」の映画会にゲストとして出席してきたそうだ。そしてこの日は、川尻町の光明寺での河野家の法事に出席して、入船山記念館で調べものをしてきたと言われた。
今月号の本誌に、こうのさんの描かれている「この世界の片隅に」についてのエッセイを掲載している。この物語は、戦中の呉を舞台に、広島から呉に嫁いだ 女性の小さな新しい世界を、淡々と描いたものだ。数々の賞を獲得したコミックの名作「夕凪の街 桜の国」に勝るとも劣らない出来と評判の作品である。
今から63年前の7月1日の呉空襲、8月6日の原爆の日、そして続く戦後の日々ー。現在連載中の「この世界の片隅に」のラストはどうなりますか?とこう のさんに聞いてみた。物語をどう終わるかは、もう少し描いてから、と言われる。力まないで、自然の流れで行きつくところがあると思います、というこうのさ んの姿と主人公すずの姿が重なって見えたのである。
食事をする中で、呉出身の作家田中小実昌さんのことで話が盛り上がった。もっと小実昌さんの小説を読みたいと言われる。戦後、小実昌さんは、中国から引 き揚げて呉に帰った。その当時のイギリス連邦軍に出入りしていたことを書いた小説は、坂口安吾の「堕落論」に通じるものがあり、こうのさんには特にオスス メしたのである。
○月○日
広島のナミキジャンクションのライブに行く。呉出身の町支寛二さんのライブである。町支さんは、長い間浜田省吾さんのバンドマスターをしている。浜田省 吾さんは、御存知呉三津田高校出身。そして町支さんは、呉から広島の修道高校に通っていた頃から浜田さんの友人で、それ以来30年以上共にミュージシャン を続けている。特に最近は、浜田バンドで一緒の相棒と二人組ライブの活動に力を入れている。
私にとって、ライブは久し振りである。最近のライブといえば噺家さん達のライブばかり(笑)。まさに若さが足りない。ステージの町支さんは私と同じ50代。いやはや若い。こうしてみると、ミュージシャンが一番若さを保つ職業かもしれない。
このライブに誘ってくれたのは、町支さんと交友のあるシロクマのKさんだ。先日の「呉繁華街大火」で被災したシロクマのオーナーだ。こんなところでライ ブを聴いている場合じゃないだろう、と私も言ってみたのだが、当人は至って冷静で、ライブに来る約束は果たさなきゃ、と言う。ライブが終わり、シロクマ全 焼のことを知った町支さんは、シロクマKさんに会うために夜遅くまで追っかけたという。