Archive for 6 月, 2014

2014年7月号

木曜日, 6 月 19th, 2014

○月○日
集団的自衛権をめぐる政府のふるまいが、連日新聞で報道されている。中でも朝日新聞紙上で語る論客のコトバが鋭く伝わってくる。
〝安倍さんの作りたい美しい国って結局、イラク戦争みたいなことが始まれば、自衛隊員が棺で帰ってくるような国なんですよ。「何だそれ、美しくも何ともねーよ」と言いたい。〟(小林よしのり)
〝聞くところによると、集団的自衛権を熱心に推しているのは外務省で、防衛省は消極的なのだという。
戦争になっても外交官は血を流さない〟(池澤夏樹)
呉は海軍さんと共に歴史を刻み、今でも海上自衛隊の基地の町だ。日本の中でも、昭和史を体現した町に生きる私たちとしては、集団的自衛権の行使問題は、より身近な問題として注視しなければならないのである。
しかし、新聞を含めたマスコミ報道からは、もう一つ国民に、日本という国家の〝今ある危機〟の実体を伝えきれないもどかしさがある。
そんなとき、集団的自衛権を考える前に読むべきサイコーの本に出合った。〝半藤一利 戸髙一成 日本人と愛国心〟である。まさに目からウロコ、昭和史を語る二人の明解なコトバに納得するのだ。
半藤さんの「再軍備を語る前に知っておくべきこと」のコトバ
〝明治から昭和の歴史をしっかりと見つめていればわかることですが、張作霖爆殺事件にしろ、満州事変にしろ、そして太平洋戦争にしろ、すべてに通じているのは「出ちゃったものは仕方がない」、あるいは「勝ったのだからいいではないか」という、まことに無責任な論理です。戦前の日本に大局的な戦略があったのか、と問うこと自体が恥ずかしいほどです。
結局、こんな論理がまかり通ってしまったために、誰も責任をとらないままずるずると戦争の道へと突き進んでいくことになりました。
もし、現在の自衛隊を取り巻く環境、国民的な空気が「出ちゃったものは仕方ない」となりつつあるのなら、一刻も早くこうした傾向を制止する必要があります。
最近はお陰様で(?)「半藤の野郎はアホーな左翼だ」なんて言われているらしいけど、右だ左だのというそんな古めかしいイデオロギーの話ではないんですね。
日本人は荒々しい戦争に向いてないし、軍隊をきちんと扱うことができない優しい民族なんです。
そしてたまたま、私たちは平和憲法を手に持っている。
だったら、それを高く掲げて歩いていこうじゃありませんか、と。
憲法改正議論について、私が言いたいのはそのへんに尽きるように思います〟
続いて戸髙一成さんの「日本は歴史から何を学ぶか」からのコトバ
〝戦争とは外交の延長線上にあるものです。そのため、同じ文化圏にある者同士の戦争なら、ある程度「話が通じた」戦いなのです。しかし、「話が通じない」者同士が戦ったらどうなるか。
これはもう、徹底した殲滅戦になります。ドイツがフランスやイギリスと戦ったときは、話が通じる戦いでした。しかし、話が通じないロシアと戦うには、どちらかが全滅するまで戦うしかなくなってしまうのです。
これは日米の戦いでも同じことが言えます。
当時の日本とアメリカはまるっきり文化の違う国でした。たとえるなら、剣道とボクシングで戦っているような状態です。
私はアメリカの原爆を決して許すものではありませんが、おそらく、アメリカは日本に原爆を落とすことについて、ほとんど躊躇なく決定し、命令したと思います。
マッカーサーは、朝鮮戦争でも原爆を使おうとしていました。また、ベトナム戦争においても、アメリカはためらわず化学兵器を使いました。
これは人種差別的な感情もゼロではないにせよ、根底には「話が通じない」という異文化、異文明の問題が横たわっています。
そして現在、アメリカはイスラム圏と衝突しています。
話の通じない相手、勝負の勘どころがわからない相手、戦いがまったくかみ合わない相手を前にしています。
アメリカの対テロ戦争が泥沼化しているのは、互いに話の通じない相手との殲滅戦に突入しようとしているからなのです。互いを知ること、互いを理解し合うことだけが解決への道なのです。〟
また半藤一利さんは、
〝私が太平洋戦争を振り返るとき、つくづく痛感させられるのが「日本人はなんと戦争が下手なのか」ということです。いや、戦争の正体についての真の認識がない。
前線の兵士たち、あるいは下士官たちは勇猛果敢に戦いました。本当に見事でした。あるいは大和や零戦を生み出したエンジニアたちの能力も素晴らしかった。しかし、指揮官が見事にダメなのです。〟
責任をとろうとしない政治家や官僚が、〝国を守る〟ためという集団的自衛権行使。それは有事の時に指揮官が強いリーダーシップの下に統制し、自らの責任において判断を下し、動かしていかなければならないのである。しかし今、そのような指揮官たる政治家は見当たらないなあ、とお二人は言われます。
半藤一利さんは「文芸春秋」の編集長を経て、歴史を伝える文筆家として有名。「大和ミュージアム」名誉館長。
戸髙一成さんは、ご存知「大和ミュージアム」の館長で、海軍史を語る第一人者である。二人の〝昭和史が語るコトバ〟をまずは、聞いて貰いたい。(半藤一利 戸髙一成 日本人と愛国心 PHP文庫)