Archive for 11 月, 2014

2014年12月号

金曜日, 11 月 28th, 2014

○月○日

NHK BSプレミアムで『戦艦大和のカレイライス』の放送があった。8月から一ヶ月、呉で撮影されたドラマである。

一年半前に監督さんの大橋守さんと脚本家の會川昇さんが編集室に取材に来られたのが始まりだった。地方都市のタウン誌で働く女性編集者が主役、という設定で脚本化するということだった。しかし、脚本が難航したようで、その後一年たってもなしのつぶてで、これはボツになったのかなと思っていた矢先、「戦艦大和のカレイライス」という衝撃的な題名のシナリオが届いたのである。戦艦大和とカレイライス!?どんなドラマだ?と早速シナリオを読んだ。

『クレヨン』というタウン誌の新米編集者が主役だ。元AKB48の秋元才加さんがその役を演じるという。シナリオを読み進むと、途中で戦艦大和の乗組員(割烹手)が時空を超えて現代に登場し、女性編集者と出会う—。あれあれ!?これは、ファンタジードラマではないか!?私が想像していた物語とは全く違った方に向いている。大丈夫かな、と正直思ったものである。

撮影が始まり、本誌でもメイキング・ドラマとして取材を同時進行で進めていくうちに、作品のゴールが見えてきたのである。

タウン誌の編集者、町おこしイベント″海軍グルメフェスタ〟、戦艦大和に一日だけ乗組んだ士官と現代に蘇った割烹手が呉を舞台につながっていく—。

放送の映像を見ると、思った以上にファンタジー色の強いドラマに仕上がっていた。まさに、大橋監督のエンターテインメント作品である。奇しくも、呉出身の神山繁さん演じる生き残りの士官をこの作品の芯になる役廻りをさせている。さすがに大橋さんは粘り強い演出家である。″淡淡〟ではなく、〝眈眈〟の人のようだ。東京に帰れば、NHKの代表的なドラマを担当することになるに違いない。

それにしても、『戦艦大和のカレイライス』の予告番組がスゴかった。夜7時のNHKニュースの後の30分番組。そして、放送日の朝7時のニュースの後半15分の番組のメイキングドラマ放送が何とも魅力的に映ったものである。メイキングドラマは、『戦艦大和のカレイライス』以後どんどん増えてくる予感をさせる。メイキングドラマこそテレビ的なものはない、と再確認させられたのである。

まさに撮影地・呉の大宣伝映像だった。NHKの地域発ドラマはこうでなくてはならない、と教わったのである!?

○月○日

25年くらい前になるだろうか。堺川の五月橋から中通に抜ける通りに、一軒だけ時間が止まったような洋館があった。ツタのからまる洋館は、夜ともなるとツタの緑がボンヤリと浮かび上がり、俄然雰囲気のある店に見えてくるから不思議だった。トリスバー海賊である。

本誌の1988年12月号で特集した「酒のある風景」の中で、海賊を取り上げた。その号を開くと、マスターの長谷川博実さんが客を相手に手を広げて話している姿が写っている。名前の横に(60)と書いてある。あれ!?あの頃の長谷川さんは60才だったのか、と改めて驚いた。今の私と変わらない年である。当時30代だった私から見ると、長谷川さんはいやはや、ずい分年を取って見えてた。〝じじい〟を見る眼というのはそういうものかな、と自分を振り返ってみるのである。

海賊が店の立ち退きにあい、移転しなければならなくなり、整理をする中で、酒の棚の隅に並んでいた『洋酒天国』65册を私が頂いたのである。

『洋酒天国』はすでに終刊しており、当時でも古書市場でバックナンバーの人気が高かった。そんな貴重な雑誌を〝これ、編集長にあげるよ、持ってって〟とポンと譲ってくれたのである。まさに長谷川さんのというより、呉の宝物を頂いた気がした。いつかこの『洋酒天国』を誌面に登場させたい、と思っていたが、やっと今号の〝くれえばんギャラリー〟に載せることが出来た。といっても12頁しか誌面をさけなかったのが残念だが、今回特集の〝呉の気持のいいバーへようこそ〟の企画につながればいいと思っている。

『洋酒天国』の発行人の開高健が「アンソロジー洋酒天国」本の巻頭文の中でバックナンバーを読む若い人達に向けて、ヴェルレーヌのコトバを贈っている。

〝変われば変るほどいよいよ同じと、

呟くなるべし。〟

〝そも、若き日に君、

何をかなせし?〟