Archive for 12 月, 2016

2017年1月号

土曜日, 12 月 24th, 2016

○月○日
NHKテレビの「日曜美術館」で谷川晃一さんの特集を見た。谷川さんには長い間本誌の表紙絵を描いて頂いた。故宮迫千鶴さんの夫であり、パートナーだった。
放送は、谷川さんのこれまでの画業や現在の伊豆高原での一人暮らしの生活が紹介されていた。また、ちょうど今神奈川県立近代美術館での谷川さんと宮迫さんの「陽光礼讃」という美術展が開催されているので、その紹介もされていた。谷川さんの〝雑木林シリーズ〟の絵を見に行きたいと思っている。

○月○日
テレビのニュース番組「報道ステーション」で、呉が舞台のアニメ映画「この世界の片隅に」が取り上げられていた。全国60館程でスタートした映画が、ネットや口コミで観客動員が伸び、異例の大ヒットを記録していると   。
戦争末期に広島から呉に嫁いできた主人公の生活を丹念にそして淡々と描いた監督のインタビューが続いた。制作費は2億5千万円、現在の収益は5億円を超えた。
12月中旬には「のん、呉へ。2泊3日の旅」という写真集が出る。これは映画の主人公、すずの声を担当したのんさんが映画の舞台になった場所を訪れるという企画である。まるで、呉の〝観光本〟のように仕上がっている。

○月○日
全日空の機内誌「翼の王国」の新年号に、呉の町の味どころが掲載されている。「二度目の」呉という旅の企画だ。呉の中通りは100年前から中国地方でも有数な繁華街だった。その歴史の上に成り立つ中通りらしい店、として紹介されている。
呉を訪れる観光客にとって、町での食は重要な位置づけである。私など旅の目的の一番は、うまくて居心地のいい店を訪れるためにある。そうして考えてみると、観光客相手の店より、地元の人が集う店に実は観光客も行きつきたいのである。
そのことに関連して、先日九留米大学の情報社会学の先生が、生徒を連れて呉に来られた。九留米と呉の〝町の食〟の共通する文化から、町の〝贈りもの〟のことを考えたいと。町の文化は、その町に連綿と続く経済活動の上に成り立つ贈りものとして捉えたいといわれるのだ。同感である。
経済と文化を別々として考えるから、どうもそのへんで地方自治は〝思考停止〟してしまっているとも言われていた。
来年の終わり頃に呉市長の選挙が行われる。町の〝贈りもの〟の意味が分かる、頭の柔らかい市長が現れて欲しいものである。

○月○日
呉が舞台の物語がまた映画化されると聞いた。2年前に出版された柚月裕子さんの単行本「孤狼の血」である。直木賞候補作で昨年の「このミステリーがすごい!」の3位になった作品だ。
舞台は昭和63年の呉である。警察と極道の壮絶な闘いを描いて、評判を取った作品である。作者は、「仁義なき戦い」の物語に連なる物語を描きたかったといわれる。
「仁義なき戦い」は極道が主役だったが、「孤狼の血」は刑事が主役だ。〝大上と日岡〟二人の刑事がハードボイルドなのである。本を読み終えた時、映画化するならどの俳優が演じたらいいか、想像力を働かせたことを思い出す。
〝今世紀最高の悪徳警官小説〟という評論もある。その舞台が呉というのも、歴史の〝贈りもの〟なのである。極道が目立った町というのも、見方を変えれば、清濁あわせ呑む町として魅力があるということである。
呉は映画の贈りものが続いている。