Archive for 7 月, 2017

2017年8月号

月曜日, 7 月 24th, 2017

○月○日
今月の特集〝観光・御手洗のデザイン〟を企画するとき、一番に頭に浮かんだのが田中小実昌さんの〝オチョロ船の港〟という小説だった。御存知と思うが、田中小実昌さんは呉三津田町育ちで2000年に亡くなった。ハードボイルドの翻訳家であり、直木賞作家でもあり、人気エッセイストでテレビなど出演も多かった。その小実昌さんに2度本誌に寄稿してもらった。その縁で、小実昌さんが帰郷されたときは、何度か御一緒させてもらった。
私は元々小実昌さんの短編小説のファンなので、地元を舞台にした小説の一つ〝オチョロ船の港〟は印象深く残っていた。この小説はフィクションだが、舞台になった港のモデルのような食堂は現存しているから、おもしろいと言ったらおもしろいようなー。
ところで、今号に引用した小実昌さんの文章の中に〝オチョロ船が出てくる映画〟のことが出てくる。私も小実昌さんと同様の記憶をたどると、〝大地の子守歌〟増村保造監督、原田美枝子主演の映画だと確信した。1976年に公開されて、その年の数々の映画賞を獲得した名作だ。私は早速DVDを取り寄せ、40年前のその作品を観た。
いや、おもしろかった。泣けてしまったのである。40年前に観たときは、何かやりきれないなあ、という物語で、主演の原田美枝子の始終何かを訴える強い声だけが耳に残った。
物語のあらすじはこうである。時は昭和初期。少女りん(原田美枝子)は四国の山奥でばばと二人で自給自足の暮らしをしていた。しかし、ばばが亡くなり一人ぼっちのりんは人買い佐吉の甘言に乗り瀬戸内海の御手洗の置屋で働くはめになる。そのときりんは13才。置屋で女郎になるのを拒みながら、オチョロ船の漕ぎ手になる。しかし、そうはいかないよ、という物語が展開する。
映画のシーンで、りんが絶望して地面に突っ伏して、ばばの声を聞こうとしたり、土を食べたりする。そんなシーンの後に、必ず四国巡礼をするりんの姿が映し出される。その巡礼シーンを繰り返し見ることで、観る者も救われる気がした。〝大地の子守歌〟という題の意味が見えてくるのである。
御手洗の歴史に遊女が果たしてきた役割はあらゆる意味で大きい。時代は変われど、御手洗全人口のうち、約四分の一が遊女だったといわれている。町の祭礼・行事には必ず彼女たちの参加があり、華やかさで盛り立てる遊女に町民は大事に接していたのである。
これからの御手洗の観光デザインは、歴史の編集こそが重要になってくる。たとえば、レコード盤のA面は、維新志士が集い、倒幕を画策する討議を重ねた御手洗。B面は、花魁、遊女が主役の港町。柔道ではないが、〝A面、B面、合わせて一本〟という歴史のデザインが観光の根っこなると思うのだ。

○月○日
カープが強い!
そして、カープの試合は、なんとおもしろいのだ!?カープファン、いや野球ファンが増えるはずだ。
ノリにノルカープ、マツダスタジアムでの巨人戦に、巨人ドラフト2位ルーキー畠世周投手がプロ初登板した。呉市川尻町出身で、本誌1月号に掲載した選手だ。試合は4回4失点でほろ苦デビューだったが、巨人高橋監督は〝楽しみなところはたくさんあった〟と今後に期待しているとコメント。
私も初めて畠投手を見たが、オーソドックスな本格派で、気の強さが表に出ればいいピッチャーになりそうと思ったのである。