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2018年2月号

木曜日, 1 月 25th, 2018

○月○日
興味深いニュースが流れた。
呉市音戸町にある広島県水産海洋センターで、養殖の殻付きカキを夏でも生食用で出荷できるレベルまで浄化する実用的な方法を確立したという報道だ。その方法は、清浄な海水を入れた水槽で数日間寝かせ、カキの細菌や大腸菌を吐かせ、紫外線ランプで殺菌するというものだ。
私は何年か前に、同じような浄化システムを使って生食カキを出荷する業者を取材したことがある。倉橋町にあるこの業者の本部は東京で、世界中のカキを輸入して、倉橋のその工場に集め、独自の浄化システムを通して生食カキを再出荷していた。
カキの本場広島ながら、生食カキを提供する店がどんどん少なくなっていった頃である。生食カキの食中毒を恐れたためだ。しかし、一方で生食カキを売りものにするオイスターバーが全国で人気を呼んでいたのである。
紫外線ランプで殺菌する浄化システムは、当時は公表出来ない安全基準に関わる問題があったのだろう。
私はそのとき思ったものだ。この浄化システムを使って、呉の生カキを売りにして観光に結びつけたらと。カキ生産日本一の呉だからこそ、安全で新鮮な生カキが食べられる、そして多彩なカキ料理と呉の地酒と合わせて提供できたらと。
今号で、約70年前に広島・呉の料理人が出版した「突出優秀料理集」の中のカキ料理を再現している。その料理を呉の「花月」の沖松さんに頼んだ。10種あった料理から五つを作って貰った。どの料理も手間を惜しまない作り方で、日本料理の本分をついている料理である。
カキ尽し料理といえば、〝広島かき船〟が有名だった。戦前までは、11月になると広島からかき船が全国に向けて出帆した。北は仙台、東は東京、大阪へ。西は博多、長崎。また朝鮮のソウルまで行っていたというから驚きだ。
かき船の多くは矢野から出帆した。その中に大阪の有名料理店〝吉兆〟を作った湯木貞一さんがいた。桜が咲く頃になると、かきの季節が終わるので、かき船はみな広島に帰っていくのだが、湯木さんはそのまま神戸に止まり、仕出し屋を始め、成功していった。かき船から日本を代表する料理人になったのである。本誌でも湯木さんの「吉兆味ばなし」の料理を何回か掲載させて貰っている。語り口の料理話から湯木さんの人柄が透けてみえる。私にとって最高の料理本なのだ。
私のかき体験は、母が作ったかき御飯が最初である。大きなかきがボコボコ入っている炊き込み御飯だ。そして東京で食べたカキフライ、これはおいしかった。小さいカキが2・3粒入ったカキフライ、油もラードで揚げてあり、これぞ洋食と思わせる料理だ。これらのカキはみな殻付きカキを使っていて、さすがに鮮度もよかった。また、四国松山で食べたカキのオデンも忘れられない。宇和島のカキで、小振りの四角い形で、オデン出汁に浸けてさっと上げて、一口で食べる。これもうまかった。何個でもいけた。もう一つ、大阪のオイスターバーで食べたカキフライのトルティーヤ巻き。サラダ巻きのカキフライ、これも呉で流行させたいと思ったものである。
そういえば岩かきを忘れていた。初夏に食べる大きな天然岩かきとは違い、小さなかきで、養殖かき筏から落ちたかきが、岩に付いて自然かきに変身したかきだ。これも本当にうまい。手間をかけて洗い、生で食べる。これも生産地にいるからこそ食べられるのである。