2015年12月号

○月○日
忘年会の季節である。
夕暮れの呉の町に多くの人出が見えると、いつの頃からか安心するような、ほっとする気持ちがわいてくる。
かれこれ30年以上、呉の中心街を見続けていると、ふと目の前の風景の中の人影の薄さに気づかされる。年々少なく感じる人出は、地方の多くの町の宿命といわれるが、町に暮らすに身にとっては寂しい思いがするのである。
それでも、忘年会の季節の12月と年度末の3月、週末ごとに多くの人出が中心街を包み込む。その賑わいを見るのは楽しいことだ。
当たり前のことだが、タウン誌の経営は町の経済がうまく回っていかなければ成り立たない。ということは、町に人出を作り出すことがタウン誌の役割なのだが、これが中々たやすいことではなくなってきている。
理由は、インターネットの普及でメディアが多様化して、日本の社会が情報過多に陥ってしまったからである。
例えば、ネットに出ている呉地域のグルメ情報を見てその店に行く。行く人の多くは、情報にあったメニューを画一的に注文する。いいとこ取りだけしたいのである。結果、その店の表面をなでただけの店訪問に終わってしまう。そして、皆一様に携帯電話で撮った画像が、自分のツイッターやブログに同じように出現する。また、彼らの流した情報がその店の採点としてカウントされる。それがまた多数の口コミ情報となりネットに定着することになる。
先日、国内最大のグルメサイト「食べログ」で、ランキングの不正操作があったことが明らかになった。それは、特定の飲食店に対して好意的な口コミを投稿して報酬を得る人達がいたというのだ。
これに対して〝消費者の信頼を裏切る行為だ〟と批判が上がったが、こうした問題はインターネットの構造上、常に起こりうるはずなのである。
しかし、その前に口コミサイトの評価をする人のことである。
〝料理について細かい論評を述べたい人達〟と〝携帯で料理の写真を撮ることをためらわない人達〟が下した判断にすぎない、ということを私達は承知していないといけない。
そこでタウン誌の出番!?といきたいところだが、残念ながらタウン誌はスポンサー頼りの経営であるからして、キレイごとでは済まされない事態があるのである。そんな中で、これだけは間違いないという店情報が、店主の存在、魅力を伝えることである。その店主の貌、声、話す言葉、動作、そして作り出すものに接することで、上辺だけではない本物を知るのである。店の魅力はすなわち店主に尽きること、これだけは間違いない。

今、都会ではスナックが元気だそうである。個人が経営する〝小さなスナック〟である。〝スナック〟という語感は私の20代、青春時代をもろに表しているのだが、今だに東京はスナック全盛だという。〝小さなスナック〟という唄もあったなぁ—。東京は青春時代がまだ続いているのか!?
‘70年代の東京、私もその現場にいた。それはそれはどこの社会も活気に満ち溢れていた。政治、経済、文化、あらゆる分野で体制派と反体制派が拮抗して主流を競い合った時代だ。地方出身者の若者が一人前になるための日々の戦いの中で、安らぎの場がスナックだった。
今でも思い出すのは、新宿ゴールデン街、渋谷道玄坂上のスナックだ。ボトルを入れていたので、安く飲めたのだ。食べ物メニューも多かったから居酒屋遣いもしていたのだろう。お金が許せば毎日でも通いたいぐらいだった。
それ等の店は、いつもカウンターには客がいて、店主と常連が店を仕切っていた。貧乏若者の私としては、パッとした金遣いをしたいのだが、出来ないのが現実だった。それでもスナックの常連扱いの客になれたのは、何だったんだろう。カタギの仕事ではない劇団という世界に身を置く、夢みる若者に愛の手を差しのべてくれたのかもしれない。
好きな食事は出来なかったが、行きつけのスナックに行けば酒にありつけた。そして、本当によく奢ってもらった。青春時代はまさに奢られ人生だった。そんなスナックで同じときを過ごした人達のことを、いま思い出すのである。

そこで、呉のスナックのことだ。呉でいう〝スタンド〟とスナックはどう違うの?とよく言われるが、全国的には呉のスタンドもスナックの中に入る。スタンドはスナックよりカウンターの中の女性の色気度が少々高い。故にセット料金がそれに比例して高い設定になる。毎日でも通いたいという客は、やはりスナックを目指す。食べ物メニューが充実して、チャージ代も安い。カラオケも唄えるオープンな雰囲気のスナックである。店主は女性でも男性でもいい、ただ演出家の店主であって欲しいのである。そんなスナックが呉の町に増えてきている、とスナックびいきな常連は口を揃える。
今号は恒例の忘年会特集を組んだ。忘年会は年に数少ないハレの会だ。日頃の鬱さ、たとえば〝わしはビールが飲みたい、発泡酒ではないビール、生ビールが飲みたいのだ〟という鬱さを晴らすのが忘年会である(笑)。そして、忘年会の2次会にはスナック(スタンド)に行きましょう。行きつけの店がない人は、そういう店を見つけましょう。
忘年会をやる。そのあなたの町づかいが呉の経済、文化を回すのです。
よろしく―。

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